この質問は、初回のご相談でほぼ必ず出てきます。たいていは「何か決まったルールがあるはずだ」という前提で聞かれます。しかし、ルールはありません。あるのはトレードオフであり、どちらを選ぶべきかは検索エンジンの事情ではなく、自社の事情によって決まります。
結論から言えば、日本で上位表示するために .co.jp ドメインは必須ではありません。取得するのが明らかに正しい状況もあれば、コストをかけてわざわざSEOを難しくするだけになる状況もあります。以下では、自社がどちらに当てはまるのかを見極める方法を説明します。
.co.jp とは実際どういうドメインか
.co.jp は、お金を払えば誰でも買えるマーケティング用のドメインではありません。日本の国別コードトップレベルドメイン(ccTLD)配下にある、JPRSが管理する属性型の第2レベルドメインで、明確な登録要件があります。
- 登録者は 日本で登記された会社、つまり日本法に基づいて設立された法人でなければなりません。日本に子会社や支店を持たない海外企業は登録できません。
- 1社につき1つ。 登記された法人が保有できる
.co.jpは1つだけです。この制約こそがドメインの意味を生んでいます。.co.jpのアドレスは、仕組みとして日本の法人と1対1で対応する識別子なのです。 - 登録には 法人の存在を証明する書類 が必要です。通常は、法務局が発行する発行日の新しい履歴事項全部証明書です。
近い選択肢もあります。汎用 .jp ドメインははるかに広く開放されており(ただし登録者には日本国内で連絡がつく拠点が求められます)、いくつでも保有できます。制限がない分、.co.jp のような「日本で登記された会社である」という含意はありません。.ne.jp や .or.jp などはほかの組織種別向けで、ここでは関係ありません。
つまり最初に問うべきは「.co.jp を取るべきか」ではなく、「日本法人があるか」です。答えが「ない」なら、判断はすでに下されています。その場合、この記事の残りは .co.jp なしでいかに成果を出すかという話になります。そして、それは十分に可能です。
Googleはランキング要因として扱っているのか
多くの方がこの質問で想定している意味では、扱っていません。
国別コードTLDは、強力かつ曖昧さのない ジオターゲティング のシグナルです。GoogleはccTLDを、そのサイトが当該国向けであることを示すものとして扱い、その関連づけは事実上自動的に行われます。設定するものではなく、実質的に上書きもできません。したがって .co.jp は、このサイトが日本向けであることを、明確かつ恒久的にGoogleへ伝えます。
しかし、ジオターゲティングは関連性とは別物です。ページがどの利用者層の候補になるかを決める助けにはなりますが、そのページが良い答えかどうかを決めるものではありません。強いグローバルドメインのサブディレクトリにある、しっかり調査された日本語ページが、.co.jp 上の内容の薄いページを上回ることは珍しくありません。比較されているのはページであって、ドメインの末尾ではないからです。
なお、Googleはかつて Search Console の「インターナショナル ターゲティング」レポートにあった手動の国別ターゲティング設定を廃止しています。汎用ドメインの場合、ジオターゲティングは宣言ではなく、言語、hreflang、コンテンツ、リンク、サーバーや事業所の所在地といったシグナルから推定されるようになりました。そのため、ccTLDに組み込まれた明確さの価値は以前よりわずかに高まりましたが、ランキング要因になったわけではありません。
本当のトレードオフ:評価の集約か、シグナルの発信か
判断の本質はここにあります。
サブディレクトリ(example.com/ja/)は、すべてを一か所にまとめます。 グローバルドメインがこれまでに積み上げてきた評価――長年のリンク、ブランドへの言及、確立されたクロールの状況――の「隣」ではなく「内側」から、日本語セクションをスタートできます。本当に強いグローバルドメインを持つ企業にとって、これは大きく、即効性があり、確かな利点です。サブディレクトリを選ぶ最大の根拠でもあります。
別ドメインの .co.jp はゼロからのスタートです。 新しいドメインにはリンクの履歴も、確立された信頼もありません。グローバルドメインが10年かけて得たものを、日本で、日本の情報源から改めて獲得し直す必要があります。不可能ではありません。日本企業のサイトはどれもそうやって今の位置にたどり着いています。ただし数年がかりの取り組みであり、ドメイン登録だけでなく予算の確保が必要です。
見落とされがちな運用コストもあります。ドメインが2つになれば、CMSも2つ(または複数ドメイン対応に難のあるCMSが1つ)、アナリティクスのプロパティも2つ、Search Console のプロパティも2つ、リリースサイクルも2つ、技術的負債も2つ、そしてスプリントボードを共有していないチーム間で相互参照を保ち続けなければならないクロスドメインのhreflangクラスタが生まれます。hreflangの不備は、サブディレクトリ構成よりもドメインを分けた構成ではるかに多く見られます。原因は技術ではなく組織にあります。
.co.jp が本当にもたらすもの
もたらすのは順位ではありません。人からの信頼です。
日本のBtoB、特にエンタープライズ領域や、金融、官公庁関連、医療、重工業といった保守的な業界では、.co.jp のアドレスは、実在し、登記され、国内で責任を負う会社であることの証拠として受け取られます。名刺やメールアドレスに使われ、調達部門が実際に行う法人登記の確認でも目にします。1法人1つ、登記の証明が必須という希少性こそが、意味を持たせているのです。
これがSEOに与える影響は間接的で、一様ではありません。買い手が日本の大企業の調達部門であれば、ドメインは問い合わせを真剣に受け止めてもらえるかどうかに関わります。買い手が、すでに自社のことを知っているエンジニアやスタートアップの創業者であれば、影響はほとんどありません。どちらも実在する市場であり、この点の重みづけはそれぞれ異なります。
サブディレクトリのほうが適している場合
- グローバルドメインに、相応の評価が蓄積されている。
- まだ日本法人がない、あるいはあっても小規模で設立間もない。
- 市場をテストする段階で、本格的に投資する前に日本でオーガニック検索の需要があるかを知りたい。
- 製品を選ぶのが、調達部門ではなく現場の実務者である。
- Webチームが1つ、CMSも1つで、2つ目の環境を運用する意欲がない。
- 初年度の日本語コンテンツの取り組みは小規模になる見込みである。
初めて日本に進出するほとんどの海外企業にとって、これが正解です。しかも後から変更できます。サブディレクトリは後で .co.jp に移行でき、その時点では、すでに成果が出ているものを移行することになります。
.co.jp を取得する価値がある場合
- 現地スタッフのいる日本法人が確立されており、日本が実験ではなく、独自の予算を持つ正式な市場として位置づけられている。
- 買い手が日本の大企業、金融機関、公共セクターに近い組織で、法人としての正当性の確認が購買プロセスに組み込まれている。
- 日本事業に、独自の製品ライン、価格体系、契約、サポート、コンテンツ計画といった実質的な運営上の独立性が必要で、グローバルサイトでは適切に表現できない。
- 日本語での評価構築を、単発のプロジェクトではなく継続的な取り組みとして予算化する用意がある。
- グローバルドメインがそれほど強くなく、別ドメインで始めても失うものが少ない。
これらの多くが、SEOの条件ではなく事業上の条件であることに注目してください。それこそが、この判断の本当の性質です。
中間策としてのサブドメイン
ja.example.com が折衷案として提案されることがあります。私たちの経験では、多くの場合これは両者の欠点を集めたものになります。.co.jp のような国内での信頼感はなく、評価の集約を重視するチームが考慮しなければならない分断も生じます。
選ぶべき正当な理由もあります。日本語サイトだけ技術スタックが異なる、組織上の明確な境界がある、CDNやホスティングの制約がある、といった場合です。そのいずれかに当てはまるなら、サブドメインで問題なく、十分に上位表示も可能です。つまりサブドメインは、インフラ上の課題への答えとしては妥当でも、マーケティング上の課題への答えとしては弱い選択肢です。
日本での順位を実際に左右するもの
ドメインの選択で成果が出ることを期待しているなら、本当に取り組むべきことがどこにあるのかを率直にお伝えしておきます。影響の大きい順におおよそ並べると、次のとおりです。
- ページが日本の実際の検索需要に応えているか。これはキーワード調査とコンテンツの問題であってドメインの問題ではなく、最も省かれがちな部分です。詳しくはWebサイトを翻訳しても日本市場向けSEOにならない理由をご覧ください。
- 競合する検索結果ページに見合う質のコンテンツか。深さ、具体性、そして日本のBtoBの買い手が期待する信頼性のシグナルです。
- サイトが技術的にアクセス可能で、正しくマークアップされているか。クロール可能で、インデックス可能で、自己参照のcanonicalがあり、hreflangが正しく機能していることです。
- 日本語の情報源から言及されているか。業界メディア、業界団体、パートナー、比較サイトなどです。
- ドメイン。
5番目に意味がないと言っているのではありません。最初の4つを正しく押さえた企業は example.com/ja/ で日本でも上位表示され、それができていない企業は example.co.jp でも上位表示されない、ということです。
使われていない .co.jp をすでに持っている場合
これはよくある状況です。何年も前に代理店が登録した、あるいは日本の子会社が小さなサイトを作ったものの、グローバルサイトが進化する一方で情報が古くなってしまった。その結果、日本向けのサイトが2つ存在して互いに競合しており、たいていはコンテンツが重複し、両者の間にhreflangもありません。
これは放置せず、意図をもって解決すべき問題です。どちらかに統合する――一方を選び、もう一方をリダイレクトし、そのリダイレクトを恒久的に維持する――か、明確な役割分担と正しいマークアップのもとで両方を運用すると決めるか、です。避けるべきなのは、中途半端に管理された日本語サイトを2つ残して同じシグナルを分散させることで、これこそが目に見える悪影響を生む状態です。
特定のサイトについてこの判断を検討しているなら、それは私たちの日本市場参入のためのSEO支援で最初に取り組む事項の一つです。法人の有無という問いが片づけば、たいていは想像よりも短い話し合いで済みます。現在の状況をお聞かせください。率直にお答えします。